創作小説

満月心中【下】(創作小説)

―――小枝子のすすり泣きが聞こえた。死後の世界に、一緒に来れたのだろうか。 私は目を開け、身体を起こした。そこは、駅のホームのベンチだった。駅員さんがおろおろしながら小枝子を慰めている。 「お嬢さんたち、何があったんだかあたしにはさっぱり分から…

満月心中【上】(創作小説)

仄暗い百合。大正時代の女学生さんをイメージして書きました。ついさっき書き上げた、できたてほやほやの作品なので、もちろん時代考証は一切しておりません。それでもよければどうぞ。 ************ やたらと明るい夜だ。ガス灯などないこの田舎の道でも、…

雨音ドライブ【下】(創作小説)

ぽつぽつと雨が降り出した今日の夕方。 今日もまた、ユキさんの出勤までふたりでのんびりと過ごす予定だった。しかし、ユキさんの部屋のドアを、どんどんと激しく叩く音が聴こえ、私は怯えた。何なんですかあれ、借金取り? 借金なんかしてねーよ。親。ユキ…

雨音ドライブ【上】(創作小説)

久しぶりに創作小説。 実はこれ、noteで公開したものなのですが、そろそろブログでも創作やらな、と妙な義務感に駆られ横流し(noteは飽きちゃって1カ月以上放置してる…)。全部で2000字ほどあるので、上下に分けました。ではどうぞ。 ****** そういえば、ユキ…

モラトリアムの部屋で【下】(創作小説)

今日は玻似子の帰りが遅い。年末に近づくと(と言っても十月の終わりくらいからだが)、彼女は毎晩のようにパーティーに呼ばれる。彼女は人脈がやたらと広く、趣味でやっているような仕事を急にやめても困らないくらいパトロンのような人がいるらしい。「金持…

モラトリアムの部屋で【上】(創作小説)

風邪が治らないおのまちです。久々に小説を書きました。いつもより長くなってしまったので、二回に分けます。テーマはほのめかし程度ですが「百合」です。苦手な方はご注意ください。************** 玻似子(はにこ)は珍名だけど、美人だ。奥二重の涼しげな瞳…

猫恋譚(創作)

とても楽しい猫文学に触れたことをきっかけに、猫の話を勢いで書きました。30分もかけてない1200字以内小説ですが、お楽しみください。やる気ない就活生と人語を喋る猫のお話です。 *** 「お前、就活はいいのかよ」 「猫のくせによくそんな単語知ってるね」 …

旗を塗る(創作)

1200字以内の掌編小説。公募に出そうと思ってたんですが、〆切に間に合わなかったためお蔵入り。するのも残念なので、ここで公開します。あー、恥ずかし。誰も何もしないでしょうが、一応著作権は私に属しますのでよろしくお願いします。 ――― 横っ腹蹴飛ばし…