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どこまでも歩けるはずなんだ

読書と仕事と妄想と。ゆるゆるやっていきたいです

雨音ドライブ【上】(創作小説)

 久しぶりに創作小説。

 実はこれ、noteで公開したものなのですが、そろそろブログでも創作やらな、と妙な義務感に駆られ横流し(noteは飽きちゃって1カ月以上放置してる…)。全部で2000字ほどあるので、上下に分けました。ではどうぞ。

 

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 そういえば、ユキさんの運転する車に乗るのは初めてだ。

 免許を取ったばかりの人間にとって、運転するには少し怖い、雨の降る温かい夜。ゆるやかな速度で振れるウィンカーをぼんやりと見ながら、私はユキさんの運転技術に感心していた。発進は速やかに、停止は穏やかに。どんな怪物が飛び込んできたって、事故は起こさなさそうな気がする。お気に入りのものばかりを詰め込んだ部屋みたいに、安心する。

「うまいんですね、運転」

「そりゃ、アンタよりはね」

 ユキさんは呆れたように言った。初めは私が運転していたのだが、方向指示を間違えるわ、カーブで反対車線に入りかけるわ、車体はガタガタ揺れるわ、自分で言うが本当にひどい運転だったので、助手席に乗っていたユキさんに

「車停めろ。アンタの運転怖すぎんだよ、交替して」

と睨みつけられ、急遽コンビニの駐車場に入り運転を交替した。

 ユキさんは安定した運転で、私たちが暮らす女性専用アパートからどんどん離れていく。郊外からライトのきらめく都会へ、そしてまた郊外へ。車窓をぼんやり眺めていると、パチン、パチンと変わっていく。雨の強さはずっと変わらない。きっと、この夜はずっとこの調子だろう。

 

 私があの女性専用アパートに住むようになったのは、主治医に「あなたの心が病んでいるのは、家族が原因だ」と言われたからだ。一度、あなたはひとりになる必要がある。そんなこと言ったって、と私は反発した。私は家族に不満はありませんし、働いて自立することなんてできないと思うんですけど。

 しかし、両親は「それなら生活費を出してやるから、一人暮らしをしてみなさい」と言った。心配性の父親が、わざわざ女性専用の部屋をいろいろと探してきた。私は「ありがとう。じゃあこの部屋にするよ」と言った。それは、一番安くて古い部屋だった。

 

 隣の部屋に住んでいたのは、ユキさんという背の高い人だった。

 夜の仕事をしているのだろう、彼女は夕方になると部屋から出て行く。平日の昼にアパートにいるのは、ニートの私とユキさんだけだ。部屋から出る気配のない私を心配してか、ユキさんはちょくちょく「余ったんでよかったら」と食べ物を持ってきてくれた。そのうち、ユキさんの出勤までふたりで過ごすようになった。口は悪いけど親切な人で、料理やメイクを教えてくれた。

 

「これからどこに行くんですか」

「それをアンタが聞くの? 私を連れだしたの、そっちだろ」

 さっきのことを思い出すと、動悸がしてきて吐きそうになる。