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夜になったらもやもやする人のために−「藤岡さんと小坂くん」(志村貴子『どうにかなる日々 新装版みどり』感想

 どこある初、マンガの紹介です。

 
 志村貴子さん『どうにかなる日々 新装版みどり』
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「性」をテーマにした短編マンガ集です。
 
 特に好きなのが「藤岡さんと小坂くん」。
 離婚した元主婦の藤岡さんは、たまに小学生の娘に会うのが楽しみ。弁当屋のアルバイトで生計を立ています。
 で、大学生バイトの小坂くんと一緒に帰るシーンでf:id:onomachi009:20160327201434j:image
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「よかった 今日はちゃんと笑えた」
 
「などと考えてしまう どうしても」
 
「スムーズに会話の流れにのれた! なんてばかみたい(いい年して)」
 
「こういうやっかいなのっていつまで続くんだろう もっとうまくやれたらいいのにね」
 
 この独白にきゅーんと来てしまった。そしてちょっとだけ涙が出ました。それなりに人生経験のある大人がこんなこと考えてるのが、たまらなく愛しいし共感します。
 
 私も、楽しい場面にいるんだけど会話に入れなくて、周りに気を遣わせてしまった、ってことが結構あります(これからもあると思う)。
 家に帰ってから「あんなこと言わなきゃよかった」「こう切り返せばよかった」と思い返したりして。でもたまに「今日はうまくしゃべれた!」って日もあって、こんな些細なことで浮かれるという。ほんと些細なのにね。
 
 
 ひょんなことから、小坂くんを家にあげた藤岡さん。自分の言いまわしが気になってしまって、「あーうまくいかない!」と思いながらコーヒーを出す。小坂くんの「俺いつもこう……余計なひとことで人を……」という言葉で、ふと涙が出てしまう。
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「ごめん」
「泣かせたのは俺だけど、正直泣くほどのことでは」
 
「いろんなことの積み重ねがこの涙なんです」
 
 このシーンでまた「分かるー!!!」ってなって涙が。
 そうなんですよね、一瞬の悲しさや辛さで泣くことって、実はあんまりないんですよね(少なくとも刺激の少ない日々を送ってる私は)。
 でも、アレルゲンのように確実に、小さい「泣きたくなること」は積もってるわけで。それが、大したことないことで、ぽろっ、と来てしまう。
 
 
 「藤岡さんと小坂くん」は、何というか、生きるのに不器用な人に「それでもいいのよ」って言ってくれる話だと思う。
 グダグダしたままでもいいんですよ、人間だもの。みたいな。
 夜になったら、一日のことを思い返してもやもやしてしまう私たちのことを、その情けなさを、許してくれる感じがする。
 
 だからこの話を読むと、私はちょっと泣いてしまうのです。