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どこまでも歩けるはずなんだ

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罪を追う夏休みー竹宮ゆゆこ『知らない映画のサントラを聴く』感想

10月になりましたね。

一番好きな季節だぜひゃっほー! と思っていたら、雨は続くし何か暑いし、釈然としないまま秋を迎えた今日この頃です。みなさんいかがお過ごしですか。

 

さて、久しぶりに読んだ本の感想。

竹宮ゆゆこの『知らない映画のサントラを聴く』。

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主人公の枇杷は、23歳無職(かわいそうな人)。夜道で女装した男に、今は亡き美しき親友の写真を強奪され、それを取り返すために夜な夜な近所を便所スリッパに自転車で徘徊する日々を送っている。人生の夏休み感溢れる生活である。

ある日、家族から「いい加減自立しろ」と家を追い出させる。箸だけを持って(夕食の時に言われてそのまま飛び出しちゃったから)夜道を当てもなく彷徨う枇杷。すると、写真を奪った女装男を発見。全力で追いかけ、箸を武器に男を追い詰める枇杷。その男は、美しき親友の死の原因となった、親友の彼氏だったーーー。

 

その後、なぜか女装男と枇杷の同居が始まる。女装男に「怖がらせてしまったから、お詫びに何でもします」とばかりに過剰に世話をされる枇杷

 

女装している理由。

写真を奪った理由。

枇杷の世話をする理由。

 

どこか狂ったような世界観の中で、男の思惑が次第に判明していく。その過程で、枇杷は、女装男が、「枇杷そのもの」ではなく、美しき親友の世界にいた「死なせてしまった彼女の欠片」を枇杷に見出していることを悟る。

 

これは罪悪か恋なのか。

 

多分一緒に住んでたら情はわくし、枇杷と女装男が恋に落ちても不思議ではない気がする。だけど、ふたりの間には、親友がいつまでも消えずに残っているのだ。親友を介してふたりは関係を作り上げている。

 

何だか凄まじい三角関係だ。

 

物語の終わりは、枇杷が一人暮らしを始め、自立しているところに女装男が職場までやってきて、自転車で迎えに行くシーンだ。作中では、ふたりはキスもしないけれど、「会いに行かなきゃ」と自転車を走らせてしまう衝動は、やはり恋だと思う。親友の写真を、面影を追いかけていたみたいに。