ダメ人間だからできることー安藤祐介『被取締役(とりしまられやく)新入社員』

今日は休みなので、3月末に買った本を読み進めている。
物心ついてから学生時代までは、活字を見ない日というのは存在しなかった。社会人って読書タイムを取るの難しいんだなぁ…慣れればできるのかもしれないけど。

今日読んだ本は、安藤祐介『被取締役(とりしまられやく)新入社員』。
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幼少期からいじめられっ子で何をやってもダメで、コンビニのアルバイトすらクビになる主人公。段ボール箱の組立作業のアルバイトで生計を立てていたが、観光気分で受けた一流広告代理店になぜか合格。
「ダメ人間っぷりを生かして、周囲から罵倒軽蔑等々を受けるストレスの捌け口」として、『被取締役』という役員に任命される。

主人公が配属されたのは、一流5名+あんまり仕事できない人2名がいる部署。見事にミッションを成功させ、部署内の団結力を高めることに成功する。
しかし、どんなにお金を得ても、「自分はいじめられっ子だった昔のままだ」と心は晴れない。

ある日、宴会での一発芸がきっかけで重要な仕事を任せられることに。しかも成功してしまう。
『被取締役』だったはずなのに主人公は周囲から尊敬されるようになってしまう。主人公の成功とは裏腹に、団結していたはずの部署の雰囲気が悪くなってしまう。

そんな時、主人公はいじめ撲滅キャンペーンCMのコンペに出ることになる。コンペで大失敗をして、元の状態に戻らなければ…頭では分かっているが、「いじめ」問題はどうしても割り切ることができない。
いじめを受けたことをきっかけに各分野で才能を発揮する著名人にインタビューする、という案を思いつき、成功する。

『被取締役』として、生きることはもうできないー主人公は辞表を会社に提出する。


仕事ができなすぎて落ち込んでいた私にとっては、笑って元気が出るのはもちろん、人生の課題に向き合うことや仕事することの楽しさについて考えさせられる小説でもあった。

いじめ撲滅のCM、本当にあればいいのに。観てみたい。
いじめを止めることはできるのか?
主人公がその問いに「できないけれど、いじめられた経験を生かすことはできる」という答えを出したのは美しいなぁと思った。

いじめに限らず、差別や偏見って加害者に訴えてもそこまで意味がないと思う。どうせ聞きやしないだろうから。それよりも、被害者に語りかけることが大切なのだ。私たちは、「世にはばかる」ことができるんだよ、と。
周囲から蔑ろにされがちのダメ人間だからこそ、そう思えるのかもしれない。ダメなのは悪いことじゃない。