号泣お仕事戦記『督促OL 修行日記』【感想】

絶対ムリな仕事その②(生活に密接に関わり失敗した時の重症度が高い)仕事に就いている人のエッセイを読んだ。

(絶対ムリな仕事については、前回記事をご覧ください。→

 http://onomachi009.hatenablog.com/entry/2017/09/25/151731)

 

 

榎本まみ『督促OL 修行日記』。

気弱な著者が、信販会社のコールセンター(クレジットカードの支払いが遅れてる人に「入金お願いします」と電話する部署)に配属され、ストレスで全身ボロボロになりながら、病んで仕事を続けられなくなった同僚や部下を見送りながら、ストレスとの戦い方を身につけていく。

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支払いが遅れてる電話と言ったって、自分が使った分の金も払えない(払わない)人が大人しく「アッごめんなさ〜い忘れてた! いれますぅ」なんてなるわけない。電話をするたびに「払うってんだろうがこの馬鹿!!」と怒鳴られ、それでもどうにか債権を回収するために宥めながらがんばるなんて……あの、これ確実に殺しにかかってませんかね。

 

私は去年、事務所でも怒号が飛び交い(上司から一方的に怒鳴られてるわけではなく、上から怒鳴られ下からも怒鳴りながら反撃という感じだった。戦争かよめっちゃうるせえ)、利用者からも理不尽に怒られまくるという環境にいて、ストレスで突発性の難聴になった。

だから、ちょっとだけ分かるところもあるのだけど……でも、世界一自分を不幸だと思った去年の自分が恥ずかしいと思うほどの過酷な環境だ。(ちなみに難聴は完治した。)

 

いつも怒鳴り声が聞こえる、年に一、二回ほど起こる刑事事件や職員を狙うストーカーとも戦う、この環境の中で私は、利用者を「敵」だと見なすようになってしまった。やってくる人間が全員憎かった。今では歪んでるなあと分かるのだが、当時は何かあった時のために、といつもカッターを二本持ち歩いていた。

 

一方、著者の榎本さんは、「なぜ怒鳴られると固まってしまうのか」「クレームに繋がりにくい方法が何かないのか」と、理不尽な中でも学ぶことを忘れない。榎本さんが見つけたクレーマーとの戦い方は、全ての感情労働に就く人全てに知ってほしい。

 

それとともに、思考停止せず、クレーマーを殺そうとするわけでもなく、「何とかして攻撃を躱す」方法を考え続けた榎本さんを尊敬する。

私自身は、悪質なクレーマーには罰が与えられるべきだと思うし、感情労働にはメンタルケア手当かなんかを付けてほしいけど、それはそれとして、「過酷な環境でも諦めず学び続ける」という姿勢は本当に見習いたい。