コミュ障タロット革命

 三か月ほど前からタロット占いを始めた。理由は「家族からも友人からも同僚からも『占いが向いてそう』とやたら言われるから」である。タロット占いにしたのも、単にカードの絵柄が綺麗だからだった。

 自分ではまだまだ初心者だと思っているし、特に恋愛相談は私自身に恋愛経験がないので本気でどうアドバイスしたらいいのか分からないし、相談する時点で大抵は私より恋愛経験があるはずなので自分の判断を信じてほしいのだが、なぜか、私のタロット占い、自分で言うがかなり人気なのである。

 

 SNSで「占い向いてそうって言われるのでタロット占い始めました」と呟くと、(私の割には)結構な数のいいねと「近所なのでよかったら占ってほしいです」というメッセージがいくつか届いた。リア友にも遊ぶたびに「今日タロット持ってないの?」と聞かれるようになった。最近、人と会うときは初対面であっても常にタロットカードを持っていく。

 みんな占いに意外と興味があるんだなあ、と素直に驚いた。頼まれるままにカードを繰りタロットリーディングをしているうち、初めはただカードの意味を解説するだけだったのが、最近では占っている人の現状、悩みを聞き出しながら、カードが持つ本来的な意味をそれに沿わせることができるようになってきた(気がする)。しゃべるのが苦手だからひたすら聞き役に徹し、だがオタクなので好きなこと(タロット)に関しては語り倒すという厄介だった典型的オタク型コミュ障の気質が生かされているのかもしれない。

 

 結構大規模なイベント(飲み会でもなんでもいい)に参加するとき、以前の私は参加者をリラックスさせるため、または場を温めるためのリクリエーションがとても苦手だった。そこで自己開示できたことは一度もない。せいぜい聞き役に回り「あっそうなんですね~」とうまくもない愛想笑いを浮かべるのが精一杯であった。

 けれど今は違う。リクリエーションをするくらいなのだから、名前と趣味くらいは話すだろう。その時に

「おのまちです。趣味はタロット占いです」

と言うと、ワッと笑いが起きたり「えーすごい! 今日持ってきてるんですか?」と聞かれたりする。鞄からタロットカードセットを出すと、さらに場が盛り上がり「じゃあ占ってくださいよ!」と事前に準備されていたリクリエーションもそっちのけでおのまち占いコーナーが始める。もはや私自身がリクリエーションである。

 場の空気を変えられたことなんて、タロット占いを始めるまで一度もなかった。むしろ、その場を汚してしまわないように、粗相をしないように必死に息をひそめていた。

 

 占いってすごいな……と思うと同時に、前は「リア充め」と思っていたけれど、今までコミュ力だけで場の空気を温めていた人たちって本当に本当にすごいんだな、と尊敬する今日この頃である。