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どこまでも歩けるはずなんだ

読書と仕事と妄想と。ゆるゆるやっていきたいです

槍を持って生きよ-丸山健二『田舎暮らしに殺されない法』感想【読書会紹介本】

 田舎に移住する人が増えている。
 そういう人を見ていると、私(片田舎在住)は「小さい頃からずっとブスだの馬鹿だの罵られ続け、すっかり自信をなくすとともに男子に対して憎悪と恐怖が入り混じり、思春期になってせっかく告白されたのに『どうせ罰ゲームでしょ?! 馬鹿にしないでよ!』と自ら恋のチャンスを遠ざけるこじらせ女子」のような心情になってしまう。
 
 なぜだ。なぜ田舎移住希望者は、あらゆる面で恵まれた都会を捨て、あらゆる娯楽と公共交通機関と雇用とその他諸々を持たない田舎に憧れだすのだ。解せぬ。
 
 都会に憧れていることもあって、彼らに対して妬み嫉みその他どす黒い感情と疑問を抱いている。そんな私にとって、この本は「もっと言ってやれ!」と読みながら応援してしまう本だ。
 
【読書会紹介本】『田舎暮らしに殺されない法』(丸山健二)

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 著者の丸山健二氏は、長野県の安曇野にお住まいであるらしい。芥川賞受賞作家なだけあって、流麗ながらきりりとした引き締まった素晴らしい文章で、田舎暮らしの恐怖を執拗に描いておられる。田舎暮らしに興味なくても、この文章のすごさだけでも一読する価値はあると思う。

 

 この本が想定している読者層は、定年退職後に妻とともに田舎に移住し、のんびりとした第二の人生を過ごそうと妄想を膨らませている中年男性であるらしい。しかし、ちょっと待った、と丸山健二氏は環境・人付き合い・防犯の面から、格調高い美文でねちねちと「アンタ、そんなんでやっていけると思ってるのか?」と問い続ける。想定されている読者層ドンピシャの人が読んだらキツイだろうなあ。でも確かに、若いうちはともかく、年取ってから田舎に住むのはしんどいと思う。病院とかコンビニなんて、徒歩圏内にありませんから。

 

 読みながら納得するばかりだったのだが、「田舎は『犯罪の巣窟』である」という章から、何だかおかしな方向になっていく。寝室を要塞化しろだの、いざというときのために脱出用ドアを作れだの、「いや、さすがにそこまでせんでも……」という提案がなされるが、丸山氏、もっとぶっ飛んだことを言い出すのだ。ここで引用しよう。

それでも不意を突かれて押し入られてしまったときに備え、人殺しなど何とも思っていない輩と互角に闘えそうな、しかも合法的な武器を用意しておきましょう。役に立ちそうな武器は槍です。

 や、槍ーーーーー??!

 ここで、涙が出るほど爆笑してしまった。これは本気なのだろうか、それとも丸山ジョークなのだろうか。笑うと同時に、出版社か著者本人にその真偽を聞いてみようか本気で一瞬悩んだ。

 

 この本は、田舎暮らしの負の側面を描いていると同時に、「個人として生きる」ことの大切さを説いている本でもある。田舎暮らしに憧れる人をバカにできるほど、私は確固とした生き方をしているだろうか。いや、できていないと反省した。心に槍を持って生きようと思った。

 

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(おまけ)

 読書会で「田舎に住むメリットって何?」と聞かれ「え、えっとお……自分でやらなきゃいけないことが多いから、できることは増える? かも?」みたいな回答しかできなかったので、家に帰ってから真面目に田舎暮らしのメリットを考えてみた。

 

①物価が安い 私が住んでいる所では、ランチセット1000円で前菜・バゲット(おかわりし放題)・でかいカツレツ一枚が出てきます。量多いっちゅうねん。

②いやでも幅広い人とのコミュニケーション能力が身につく 田舎では、ピンポンなしで近所の人や家族の友達が家に上がり込んでくることはわりとよくあります。パジャマすっぴんでも堂々とそれなりの対応ができるようになる、かも。

③いつまでも「若者」でいられる 田舎は高齢者が多いので、相対的に「若者」扱いされる期間が長くなります。うちだったら40歳までは若者ですね。もっとすごいところだと、50歳くらいまでは「若者」という括りだそうですよ。

④ベビーカーに足を轢かれない これは、都会で体験してびっくりしたことですね。ベビーカーに足を轢かれて野太い声出してしまいましたよ。都会の子育て中の方は、道歩くのも大変なんだなあ……。田舎は道路の割に人が少ないので、ベビーカーのスペースがないなんてことはありえません。

 

うーん。あんまり思いつかなかった……。