加門七海『猫怪々』 感想

 『猫怪々』は集英社文庫から出ている本で、作者の加門さんについて何も知らなかったのですが、表紙に惹かれて買ってしまいました。前に『猫と庄造と二人のをんな』を読み、猫愛が高まっていたこともあるのでしょう。

 著作権を侵害しなさそうなもので、よい写真が見つからなかったので、ここには載せませんが、本当に可愛い表紙です!! 双六っぽい感じで和風。レトロで素敵です。

 

 猫に優しい町に引っ越した「見える」主人公。念願かなって(?)仔猫を拾い、一緒に暮らし始める。

 しかし仔猫はいくつも病気を持っている上に、なぜか怪奇現象まで起こる。病院通いはもちろん、サプリや食事で栄養補給、ストレスを減らすための工夫、それにお経や気功などなど。全力&全人脈(主人公はオカルト人脈が豊富なのです)を以って仔猫・ののちゃんに尽くす主人公。完全にののちゃんの下僕になってます(笑) 

 ののちゃんに振り回され、主人公が体調不良になってしまうことも……。だけど、何だかとても幸せそうだ。

 私は作者について何一つ知らなくて、この本はフィクションだと思っていました。ところが、Amazonで調べてみると「エッセイ・随筆」カテゴリーに入っていた。実話系怪談を書かれてきた方だったんですね。

 しかし、それを知らずに読み進めていた時も、強くリアリティを感じていました。何と言うか、気張ってお経を唱えたりお呪い(と言っていいのかどうか)をしている感じがしなかったのですね。うわG出た、しょうがねぇな殺虫剤買ってくるか、みたいな、特別でも何でもない日常を描いているような気がした。

 それに、自分が庇護している対象であるはずの仔猫に振り回されてへとへとになって、それでも愛しさが止まらないという、その溺愛っぷりが「ああ、猫飼ったらこうなるんだろうな」と、動物飼ったことないのに思わされたのですね。前、私の友人に「動物飼いだしたら、まともな人(虐待なんてしない人)はみんな親バカになるんだよ! うちの子が世界一可愛いと思うもんなの」と力説されたことがあるのですが、あれは本当なんだろうな、と。

 猫を飼ってみたくなる本でした。いや、作中で「人が猫を選ぶんじゃなくて、猫が人を選ぶんですよ」と猫好きサイキッカーが言っていた。猫に選ばれなかったらどうしよう……とも思ってしまうのだけれど。