じわじわ挑戦中–村上春樹『パン屋再襲撃』感想
前に、村上春樹アレルギー(彼の小説を読むとなぜか頭痛が起こる)だったのに、大学の講師に薦められた『神の子どもたちはみな踊る』ではアレルギーが発症せず、むしろすごく面白かった、という記事を書いた。
それをきっかけに、「もしかして短編集なら読めるのでは?」と思うようになり、最近少しずつ、村上春樹の短編を読むようにしている。他にも読みたい本がたくさんあるので、本当に、じわじわ少しずつ、だけど。
なんで読みたい本はいっぱいあるのに、私にとって「ものすごく魅力的!!」というわけでもない、村上春樹の本を読まなきゃいけない気がするんだろう。これって……もしかして恋?!
村上春樹に恋に落ちた説はさておき、村上作品第2作目はこちら。
表題作を含めて6編のちょっと不思議な短編が収められている。これも面白かったです。一番印象に残ったのは、やはり表題作の「パン屋再襲撃」なので、これだけあらすじをちょっと紹介。
深夜に強烈な空腹感に襲われた夫婦。しかし冷蔵庫の中にはろくな食料がない。夫は「深夜営業してるレストランにでも行こうよ」と提案するが、妻は「それはちょっと間違ってると思う」と厳かに反対する。どうしたものか、と思っていると、夫は学生時代に友人とパン屋を襲撃し、店主お気に入りのクラシック音楽を聴く代わりに、パンを大量にもらう、ということがあったことを思い出す。妻はその話を聴き「パン屋を襲うわよ」。こうしてふたりは、パンを奪うべく夜の街に繰り出す―――。
あらすじですでにツッコミどころ満載ですね。何で深夜にレストランに行っちゃだめなんだ。そして、なぜパン屋を襲撃するのはいいんだ。コンビニにでも行きなよ。
どうやら「パン屋を襲撃した」というのは、夫の中で何かよく分からないが「呪い」のような存在になっており、その禊のためにパン屋再襲撃するらしいのですが……それ禊になるの? 余計呪いがかかるんじゃない?
教訓めいた話でもないし、深夜営業してるパン屋がなくてマクドに突入するし、読んでるこっちは訳が分からない。けれど、その短さゆえに、訳の分からなさがかえって楽しくなってくる。やはり私にとっては、村上春樹は短編がいいみたいです。
ところで、ほとんどの短編に「ワタナベノボル」という名前が出てくるんだけど、何者なんだろうこの人。他の作品にも出てくるのだろうか。