喪女の恋と友情-西加奈子『炎上する君』感想【読書会紹介本】

 おととい、読書会に行ってきました。1ヶ月ほど前にブログで書いた、知り合いに誘われた読書会の第2回目です。

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 前回、とても盛り上がって「またやりたいね!」って感じになったので、誘ってくれた知り合いの人が企画してくれたのです。ありがたやありがたや。前回は5人でしたが、参加者のつてで新しい人が2人来てくださいました。今回もとても楽しい読書会になりました。

 今回も、その時に紹介した本について書きたいと思います。

 

読書会紹介本 西加奈子『炎上する君』

 少し不思議な世界で起こる恋や希望を描いた短編集。拾ったケータイに届いた温かいメールに励まされる「空を待つ」。足が炎上しているという男を追う、心に空虚さを抱えた女性二人の憂鬱と恋を描く「炎上する君」。倦怠感や憂鬱な世界の中で動けなくなった人たちにやさしいものが訪れる、味わい深い物語ばかりです。

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 読書会では、表題作「炎上する君」について紹介しました。学業優秀で仕事もできるが、感性豊かな学生時代に男子から「ブス」といじめられたせいで、男性嫌いな浜中と梨田。二人は、「冒険がしてみたい」とバンドを結成する。バンドは大ブレークして、退屈な日々から抜け出せた、と思ったら、バンド活動にも空虚さを感じるようになる。しかし、恩師の葬儀中に「足が炎上している男」の噂を聞き、その行方を追うようになる。そして、とうとうその男を捕まえる―――。

 と、あらすじは以上のような感じです。

 作品の中にこういう言葉が出てきます。

 葬儀の際、元クラスメイトが私達を見、「変わってねぇ」と笑っていたことに気付かないほど、我々は阿呆ではない。それどころか、そこにいた誰よりも賢く、聡い。痩せただのパーマが似合うだの綺麗になっただの騒いでいる女子とは、そしてそんな女子を値踏みし、デブだブスだとからかっていた相手の変身に驚いて態度を軟化させる男子とは、少しでも打ち解けなくて良かったと、心から思った。

とかく男性というのは阿呆で低能で見るのは女の体ばかりで女を自分たちより低級なものであると信じて疑わず頭の中は中身のない女との痴態ばかり、私や浜中のように、自分たちより知識も技術も能力もある者を敵視するものである。

  語り手は梨田ですが、浜中も似たような感じの人物なので、二人はミサンドリー(男性嫌悪)なのかな、と思っていると、こういう記述も出てきます。

 私は、女、それも不細工な女であるということで、いわれのない迫害を受けてきた。小さな頃から、ずっと。ずっと。女であることを、捨てたかった。だからといって、男にはなりたくなかった。(中略)

 女にも男にもなりたくない私は、では、何だったのだろうか。

  彼女は「美しい女を男が値踏みする」という構造を忌み嫌っており、評価される側にも評価する側にもなりたくないと思っています。「デブス」と罵られてきた私は、気持ちが分かり過ぎて心が痛むほどでした。女らしさも男らしさもいらないし、評価すらいらなくなってくるんですよね。いっそ無視されたい。

 しかし二人は、「足が炎上している男」と邂逅を果たしたことで変わっていきます。ネタバレになるので書きませんが、何だか幸せな感じのラストです。よかったね!